触れたい、cross
雨が降る前に、不動産屋さんから預かっていた部屋のカギと地図。


その地図は今、彼の手元にある。


「…あー、うちの近くだ」


こっちー。


前方を指差しながら、道案内をしてくれる。


相変わらず、揃う歩幅。


正直、助かった、と、思う。


方向音痴だし、何よりも、心細かったから。


私のスーツケースを引いてくれる横顔をそっと、眺めた。



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