触れたい、cross
「…キレイ…、」


コトバが勝手に、口をついている。


「…ふふ…なんすかー、それー?起き抜けに、いっぱつめに放つ、コトバっすかー?」


少し、首を傾げて、気怠い雰囲気を纏っている。


その返答だけ、で。


普段から、言われ慣れているんだろうな。


容易に想像ができる。


「…伊織、くん…」


くちびるから勝手に出た、その名前、は。


月明かりに溶けてしまいそうな、儚さをはらんでいる。





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