触れたい、cross
「はい」


伊織くんからの、迷いが一遍もない返答、に。


呼び掛けた私のほうが、戸惑う。


「…え、…あ…、帰ったん、だと…」


「いやいや、言ったでしょ。ちょっと待っててー、って」


またも、首をゆるく傾げる、伊織くん。


「…や、で、も…」


窓から射し込む月明かりをふたり、一身に受けて。


ただひたすらに、見つめ合う…




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