触れたい、cross
素肌に、乾いたシーツの感触。


急速に、熱を失ったせいで、今まで感じなかったその感触が、ふいに姿を現す。


もそもそと、身動きをして、その感触を逃そうとするも、なかなかうまく、いかなくて。


数回繰り返して、諦める。


「…なに、やってんのー?」


上半身裸のまま、ジーンズ姿で、黒いマグカップを両手に持って、私を見下ろす両瞳。


相変わらず、深い黒。に。


飲み込まれそうになる感覚が、襲う前に目をそらす。


気持ち悪い、シーツの感覚のことを話そうとして、うまく伝えられなさそう。で。


「…別、に」


コトバを畳んだ。



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