触れたい、cross
「今夜、寝るのに困るだろうと思って。寝袋とブランケット、持ってきたから」


部屋の隅に置いてあった寝袋を、キレイな指先が引き寄せた。


「はい。どーぞ」


私に差し出してくれた、寝袋を見つめる。


「…どう、して…?」


呟いた私に。


「それって、さっきとおんなじ質問ー?だったら、答えはさっきと、いっしょー」


気怠い口調は、相変わらず。


気になったから。海乃さんの、こと。


伊織くんの視線が、まっすぐにこめかみに、刺さる。


……、


再び、コトバを失くすしか、ない…



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