触れたい、cross
目の中に、畳に染みを作ってゆく、自分自身が落とした涙、と。


チカラなくうなだれる、上を向いた自分の両てのひらが映っている。


コトバを発することも、動き出すことも出来なくて。


ひたすらに、この状況を黙ってやり過ごすことしか、術がない…


…と、いびつな点々と続く染みと、自分の両手だけが映っていた視界に、陰が、落ちてきた。


自分が泣いている、みっともない姿を忘れて、反射で顔をあげたら、私の側に立って、私を見下ろしている伊織くんと、目があった。










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