触れたい、cross
「…ちゃんと、言いな、よ…?」


その口調には、トゲがなくて。


ふわり。と、やさしく、私を包む。


「…さびしい、すごく、さびしいから、今夜だけいっしょに、いて…?」


伊織くんを見上げながら、ひたすらに素直にコトバを紡ぐ。


「よくできましたー」


私と目線を合わせるように、しゃがんだ伊織くんは、私のアタマを撫でながら、告げた。


しっかり合った視線。


不思議な光を湛える、伊織くんの目の色。


吸い込まれてしまいそうだな…


その目から、目が離せなくなりながら、思った夜の、こと。



< 81 / 108 >

この作品をシェア

pagetop