触れたい、cross

あらかじめ、プラスチックの容器にスタンバイしてあるお弁当に、あとは、温かいご飯を詰めるだけ。


心持ち、ご飯を多めによそって、ビニール袋に入れて、「ありがとうございます」伊織くんに、手渡した。


「あざっ、す。いただきます」


妙に丁寧にカラダを折る伊織くんの姿にまた、笑みがこぼれる。


「あとで、コーヒー飲みに行ってもいい？」


なんだか、伊織くんの姿を見ると、反射的にコーヒーが飲みたくなってしまう。


「あー、オレ今日、海乃さんが終わる時間には仕事終わってるわー」


「なぁんだ、そっか。残念。残りの仕事も頑張ってー」


告げたら。


「おー、ほどほどにがんばるー。そっちもねー」


ゆるい挨拶を残して、ゆっくりと歩いてゆく背中を見送った。



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