触れたい、cross
「…なに、考えてるんすかー?」


ふと、立ち止まった伊織くんが、真っ直ぐに私を見つめている。


夕焼けのオレンジを頭の先から一身に浴びて、ぞっとするほど、美しい。


いつもは漆黒の、伊織くんの両目。


今はオレンジ色を宿して、ゆるり、と妖しく輝いている。


“怖い“と、思った。


何が…?


伊織くんの存在自体が、なのか。


伊織くんが居なくなってしまうことが、なのか。


自分でも、わからない…



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