触れたい、cross
「…独りに、なりたくないな…と、思って…」


その声は、自分でもはっきりわかるほどに、みっともなく、震えている。


私はいったい、なにを望んでいるんだろう…


いや。


そもそも、なにかを望むなんて、私がいちばんしてはいけない気がして。


いちど、ぎゅっと、両目をつぶる。


もう一度、ゆっくりと目を開けたら、変わらずに佇む伊織くんの姿があって。


なぜだかすごく、安心、する…





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