限界社畜ですが、この度やってることはブラックなのに超絶ホワイトな事務職に転職しました。
賑やかな集団の横を虚しくなりながら通り過ぎて、改札口へと向かう。
改札の手前で定期を入れている財布をカバンから取り出そうとしていつも入れている場所に財布がないことに気が付く。
いやいやいや、ウソでしょ?そんなことって……。
改札口から少し離れた場所でガバッと勢いよくカバンを開いて中を確認する。
がさごそとカバンの中を探すがお目当て物は一向に見つからない。
……やらかした‼オフィスに財布忘れた、マジで最悪。
スマホのロック画面を見ると23時53分。
終電まで残り20分、めちゃくちゃ急げばギリギリ間に合う時間。家に帰るにしてもネカフェに泊まるにいてもオフィスに戻るのは確定。できることなら家で寝たい。
私は、ぐるりと先ほど通ってきた道へと振り返り駆け出した。
しんと静まり返ったオフィス街にカツカツカツと私の履いているパンプスの音が響く。出来る限りの速度でオフィスの入っているビルへと向かいながら、こういう時ヒールの無い靴で出勤していたら走れたのにと思ったりする。
流石に、今のコンディションで全速疾走するとぶっ倒れる自身しかないけど。
少し息が上がりながらビルが見える距離まで来た時、ふと目に入ってきたのはビルの向かい側に停まっているフルスモークの黒い高級車。
こんな時間にオフィス街に停まっているのは明らかに不自然な車。
たか、私がオフィスを出るときには止まってなかったはずなんだけど……私と同じ忘れ物したとか?いやこんな時間に取りに来るかな普通。
……まぁいいか。さっさと財布とって駅まで急ご。
私は黒の高級車のことは無視することにして、ビルの裏口へと向かうことにした。