7度目の身代わり婚は、溺愛不可避
第1章 契約結婚の話



─長い石畳を登った先、山の上にある小さな神社。
古くなって、訪ねる人など見たことの無いそこは、亡き母の思い出の場所だった。

幼い頃から、

『神様はいつもあなたを見ているわ。良い事すると、自分に返ってくるのよ』

が、口癖だった母。


両親が離婚し、その後に父親が再婚した相手に嫌われたことで、家に居場所がなかった母が縋った神社。

学校が終わった後は補導されるギリギリの時間まで、ひとりで社を掃除したり、掃き掃除をして、時間を潰していた母の習慣は小学校から高校を卒業する年まで続き、義母の主張のせいで、死ぬまで家から出ていけないと嘆いていた母は何かに導かれるように神社を訪れた父に一目惚れされ、結婚前提で告白された。

その後はトントン拍子で話が進み、翌年結婚。
更に翌年には、娘─私が生まれ、幸せに満ちた生活。
ここまで聞けば、神様の存在を信じるだろう。
事実、父も何故長く辛い石畳を登ったのかは謎で、気付けば、登り始めていたらしい。
予想外にもそこで運命の人に出逢えたから、自分は果報者だと笑っていた。

両親が愛し合っていて、幸せそうな姿を見るのは嬉しくて、ふたりみたいに誰かと愛し合って幸せな結婚生活を送りたいなって、そんな思いもあった。



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