7度目の身代わり婚は、溺愛不可避



祝福とは名ばかりで、少し人と違うだけ。
彼らはそれらの神話を背負いながら、国を長年支え続けてきた名家であり、その凄さは亡き両親によく語られたので、よく覚えてる。

(昔は名家が…緋ノ宮の場合は朱雀宮が開くパーティーによく出たものだけど、私の両親が亡くなってからは誘われなくなったんだよなー…)

恐れ多くも、朱雀宮の当主夫妻と友人だった両親はいつも、親友だと言いながら、朱雀宮当主夫妻のすごい所を語ってくれていた。

兄が欲しかった亡き父にとって、朱雀宮の当主は兄のような存在だったのだろう。

「まあ、婚姻を結ぶならば、他の名家の血縁ですからね……最近は、外の血を入れるようになったみたいですが」

「そうしないと、身体虚弱な子ばかり産まれますから。─事実、そうして、冬は滅びましたし」

冬の名家─柊家。
血を引くもの自体はいるらしいが、その唯一無二の力を持つ後継者は今、行方不明だという。
遺された、当時幼かった彼の弟は今は大きくなったものの、柊という家に耐えられる身体をしておらず、あまり表に出てこないのだとか。

「大変ですねぇ……何で私を婚約者にしたいのかよくわからないですけど、私、大学に行ってみたいんですよね。今年で卒業なんですが、許して貰えるはずもなくて。なので、大学卒業までを保証してくれれば、婚約者の振りでも何でもします」

「助かります。大学進学は手続きをしましょう」

「ありがとうございます。あ、一応、亡き両親に厳しく躾られたので、礼儀作法においては問題ないかと思いますが、不安なので、それを指導して下さる先生を手配いただきたいです」

「分かりました。─他にありませんか?」

「あとは……」

何かあっただろうか。─あ、そうそう。

「一応聞いておきますが、兄君には恋人などはいらっしゃるのでしょうか?」

「…いないと思います。彼が隠してなければ」

「そうですか。分かりました」

いてもいなくてもどっちでもいいが、いた場合は、その相手に気を使わなければならない。
ちゃんと別れるから大丈夫ですよー、くらいの、気を。



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