碧い夏の約束

3章:出会い

駄菓子屋で待つこと10分。扉が開く音がした。

ガラッ。

店長「帰ってきたみたいだね。」

凛月「そうみたいですね。」

正直緊張していた。待ってる間、お茶を出してもらったが、緊張で味がしなかった。

孫「ばあちゃんただいま。買ってきたよ。」

お孫さんが帰ってきた。店長さんは少し待っててねと言ってお孫さんを出迎えに行った。俺は扉越しに話を聞いていた。

店長「ありがとう瞬。」

瞬「ううん、もう腰悪いんだから無理せずに頼ってよね。」

店長「いい子だね、瞬は。そうだ、紹介したい子がいるんだよ。」

瞬「俺に?誰?」

店長「瞬と同い年でね、東京の子なんだって。いい子そうだったから瞬と仲良くなれるかなぁって思って引き止めちゃったの。」

瞬「ばあちゃん、またお客さん引き止めて…。前も言ったけど、俺慣れ合うの好きじゃないんだよね。それに仲いい奴ならちゃんといるし…。」

店長「遥翔くんだけじゃないの!おばあちゃん心配なのよ…。」

ガチャっ。

遥翔という名前を聞いて、思わず扉を開けてしまった。

凛月「あの、遥翔って…。」

瞬「篠宮遥翔。何?知り合い?」

俺は口ごもってしまった。俺は遥翔を覚えていないので知り合いと呼べるのかは怪しかった。

凛月「いや、知り合いというかなんというか…。」

瞬「歯切れ悪いな。お前名前は?」

凛月「えっと…。小鳥遊凛月…です…。」

瞬「は…?お前が小鳥遊凛月?」

凛月「え?」

なぜか向こうは俺のことを知っているようだった。

凛月「あの、俺のこと知ってるんですか?」

俺は恐る恐る聞いてみた。

瞬「あぁ、知ってる。遥翔から聞いてるからな。」

凛月「え、あ。そうなんですね。」

不思議な感覚だった。結華と母さんの話を聞く限り、遥翔は他の人に胸の内を明かさないイメージだった。でも、そんなことないんだって思った。

瞬「ていうか、何で敬語なわけ?」

凛月「え?だって初対面ですし…。」

瞬「敬語いらない。同い年に敬語使われるの気持ち悪いし…。」

店長「これ瞬。気持ち悪いなんて使っちゃいけないよ?ごめんね凛月くん。根はいい子なのよ…。」

凛月「いえ、大丈夫です。それにまだ会ったばかりだけど、優しい人だってなんとなくわかりました。」

瞬「なんだそれ、意味わかんねぇし。」

凛月「じゃあお言葉に甘えて、敬語外させてもらうね。瞬って呼んでもいい?」

瞬「好きにしろ。」

瞬はそういって、そっぽを向いてしまった。

凛月「ありがとう。」

すると、張り詰めていた緊張の糸が切れて俺はその場に倒れこんだ。そして急な眠気に意識を持っていかれた。
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