碧い夏の約束


ピッ、ピッ…。

凛月「うっ。ここは…?」

目が覚めて身体が全く動かないと感じた。動かすと全身に激痛が走った。

結華「え?凛月?」

名前を呼ばれて振り向くと結華だった。結華は俺の顔を見た瞬間涙を流して、医者を呼びに行った。その後、事故に遭ったことを聞いた。しかし俺は、事故に遭うまで何をしていたのかが全く思い出せなかった。

凛月「俺、何で事故に…?」

結華「遥翔を庇って轢かれたんだよ。心配したんだからっ!!」

凛月「心配かけて悪い、ところで遥翔って誰?」

結華「え…?」

その瞬間その場の空気が凍てついた。

結華「何言ってんの?冗談にしても笑えないって…。」

結華は酷く混乱しているようだった。その後、医者から部分的な記憶喪失だと聞かされた。

それからは全員の態度ががらりと変わった。まるで何もなかったかのように…。



《結華side》

凛月が眠りに落ちてから、私は外に出た。しばらく呆然としていると、ふと昔を思い出した。全てが変わってしまった事故の日を…。



正直、凛月が事故に遭ったと聞いた瞬間、生きた心地がしなかった。手術は無事成功し、凛月が目を覚ますのを待つだけでも心苦しかった。だが、遥翔は責任を感じていたのかもしれない。そんな遥翔に対して、私は何もできなかった。

病室に行くと、意識が戻らず痛々しい姿になっている凛月とその横でうなだれている遥翔がいた。

結華「遥翔…?」

遥翔「ぐすっ。凛月、俺を庇って…。馬鹿なやつだな。絶対死ぬんじゃねぇぞ。勝手に死ぬなんて許さねぇからな。」

遥翔の瞳には後悔の涙が滲んでいた。そして遥翔は私の存在に気付いた。

遥翔「よぉ、結華。」

結華「あ、うん。」

沈黙が続く中、凛月のお母さんも合流し、ようやく遥翔が口を開いた。

遥翔「小母さん、ごめんなさい。今回の事故は俺のせいです。」

母「頭をあげて遥翔くん。不慮の事故よ、遥翔くんは悪くないわ。」

遥翔「いいえ!凛月のことは俺が守るって小母さんと約束しました。俺はその約束を破りました。だから今回の事故は俺の責任なんです。本当にすみませんでした。」

遥翔はそう言って深く頭を下げた。すると凛月のお母さんはその場に泣き崩れた。

母「もういいのよ遥翔くん、命に別状はないんだからっ…だから、うっ、うぅ…。」

収集がつかなくなった時、凛月の詳しい検査結果が出た。そこで、脳に異常が出て部分的な記憶喪失になってしまったことを伝えられた。その瞬間、遥翔は病室を走り出た。

結華「遥翔!!」

私は無我夢中で遥翔を追いかけた。今遥翔を1人にしたら、いなくなってしまう気がした。

結華「遥翔っ!待って!」

遥翔「来るなっ!俺は最低の人間だ!」

結華「どうして?凛月が事故に遭ったから?」

遥翔「そうだ、俺が守ると約束したのに…。せめて事故に遭ったのが俺なら良かったのに…。」

結華「ばかっ!何でそんなこと言うのよ!」

遥翔「結華…?」

結華「確かに凛月が事故に遭ったって聞いてショックだった。でもそれは遥翔が事故に遭っても同じだよ!ぐすっ。今回の事故は、遥翔のせいじゃない。凛月も記憶障害以外は異常ないし、遥翔も無傷。むしろ事故に遭ったのにこれだけで済んで、私は良かったと思ってる…!」

遥翔「結華…。あんなこと言ってごめん…。そんでありがとう。だから泣くな。」

遥翔はそう言って私の涙を優しく拭ってくれた。でも責任を感じずにはいられない遥翔は、凛月が目覚める前に引っ越してしまった。



もう何年も前のことなのに、鮮明に覚えてるものだと思った。正直、遥翔が心配じゃないと言えば嘘になる。今も責任を感じているのかもしれない。でも文化祭の日、こっちに来てくれて向き合う気持ちを感じた。だから大丈夫だと信じたい。

結華「さて、そろそろ凛月起こさなきゃ。日が暮れちゃう。」

私は立ち上がり、凛月を起こそうと空洞へ足を進めた。
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