ムーンライトベリーの香りが忘れられなくて
第27話 カーテンの隙間がのぞく満月
愛香は万智子と一緒にふとんを隣同士敷いて、万智子の恋バナ話で盛り上がりながら就寝する。本当の母とは恋バナなんてしたことない。友達に話す感覚で接することができた。心がリラックスした状態で過ごせることに幸福感を得られていた。実母と和気あいあいと話したのはいつだっただろうか。仲良し親子はいつ殺伐とした空気になってしまったのか。幸せと感じていたが、過去を振り返ると悲しくなってしまう。窓の外に光る満月がカーテンの隙間から照らし出していた。愛香は、万智子のすやすやと眠る横で眠れなくなって、トイレに行こうとすると、トイレの水が流れる音が聞こえた。
「わぁ?! びっくりした」
大きめの白いTシャツと黒いハーフパンツを着ていた愛香に、ステテコと派手な虹色のシャツを着た千晃先生にびっくりしてすぐどこか安心した。。
「眠れないのか?」
「先生も?」
「ああ、叔父さんのいびきがうるさくて寝付けないんだ。……まぁ、それだけじゃないけどさ」
「いろいろ考えちゃってるんですね」
「…………」
千晃先生は、テーブルに置いていた電子タバコのカートリッジを本体に差し込みボタンを押した。ベランダの灰皿に向かった。
「紙タバコじゃないんですね」
「叔母さん、うるさいからね。寿命縮めるなって言うし」
「親孝行?……あ、叔母さん孝行かな」
「そんな細かいの良いよ。一応、俺の親としてずっと世話してくれたからね。飴と鞭やってくれるんだわ。ありがたいことなんだけどね」
ぷはーっと天井に息を吐く。紙タバコと違って、煙の広がりは少ない。匂いも全然臭くない方だった。愛香は、紙タバコの匂いも好きな方だが、どうしてタバコを吸いたくなるんだろうと疑問に思った。
「先生はどうしてタバコ吸うの?」
「ストレス発散? 1人の時間が黙々と取れるからとか。うーん、瞑想とか?」
「私いるから1人じゃないよ。ふとんに行った方がいい?」
「そういう意味じゃないって」
千晃先生は愛香の腕をしっかりとつかむ。
「ここにいろ」
「……ふーん」
少し乱暴だったが、近くに寄せてくれたことが嬉しかった。
「まぁ暇つぶしってことで捉えてさ」
「……わかりましたよ。私で言うところのスマホでゲームするみたいなもんですね」
「何のゲームすんの?」
「えっと、瓶の中にカラフルなボールがあって、それを色分けして遊ぶのとか、ボールでブロック崩しとか……」
愛香はスマホの画面を千晃先生に見せた。学校ではやり取りをできない内容だ。先生がゲームを推進しているみたいでおかしな感覚だった。
「ハマりそうだな、これ」
試しにやってみると案外はまってしまうようだ。愛香は、違った先生の表情が見えて、先生じゃなく1人の少年のように見えてきた。実の親を亡くした千晃先生と、実の母親に見放された愛香の関係性相反していて共通点ではないはずなのに、なぜか重なる部分がある。どちらも誰かに好かれたいという承認要求が強いんだろうと思う。
千晃先生の実家に来て、現実世界から離れられて安心する反面、このままでいいのかという不安がよぎる。ここにいてもいいんだと声をかけられるが、何だか複雑な気持ちだ。いい大人がいつまでも叔母を頼るわけにはいかない。
千晃先生はあることをひらめいていた。
愛香は教師を辞めたという先生の決意に圧巻するが、無職の状態はいつまで続くかと心配していた。
「わぁ?! びっくりした」
大きめの白いTシャツと黒いハーフパンツを着ていた愛香に、ステテコと派手な虹色のシャツを着た千晃先生にびっくりしてすぐどこか安心した。。
「眠れないのか?」
「先生も?」
「ああ、叔父さんのいびきがうるさくて寝付けないんだ。……まぁ、それだけじゃないけどさ」
「いろいろ考えちゃってるんですね」
「…………」
千晃先生は、テーブルに置いていた電子タバコのカートリッジを本体に差し込みボタンを押した。ベランダの灰皿に向かった。
「紙タバコじゃないんですね」
「叔母さん、うるさいからね。寿命縮めるなって言うし」
「親孝行?……あ、叔母さん孝行かな」
「そんな細かいの良いよ。一応、俺の親としてずっと世話してくれたからね。飴と鞭やってくれるんだわ。ありがたいことなんだけどね」
ぷはーっと天井に息を吐く。紙タバコと違って、煙の広がりは少ない。匂いも全然臭くない方だった。愛香は、紙タバコの匂いも好きな方だが、どうしてタバコを吸いたくなるんだろうと疑問に思った。
「先生はどうしてタバコ吸うの?」
「ストレス発散? 1人の時間が黙々と取れるからとか。うーん、瞑想とか?」
「私いるから1人じゃないよ。ふとんに行った方がいい?」
「そういう意味じゃないって」
千晃先生は愛香の腕をしっかりとつかむ。
「ここにいろ」
「……ふーん」
少し乱暴だったが、近くに寄せてくれたことが嬉しかった。
「まぁ暇つぶしってことで捉えてさ」
「……わかりましたよ。私で言うところのスマホでゲームするみたいなもんですね」
「何のゲームすんの?」
「えっと、瓶の中にカラフルなボールがあって、それを色分けして遊ぶのとか、ボールでブロック崩しとか……」
愛香はスマホの画面を千晃先生に見せた。学校ではやり取りをできない内容だ。先生がゲームを推進しているみたいでおかしな感覚だった。
「ハマりそうだな、これ」
試しにやってみると案外はまってしまうようだ。愛香は、違った先生の表情が見えて、先生じゃなく1人の少年のように見えてきた。実の親を亡くした千晃先生と、実の母親に見放された愛香の関係性相反していて共通点ではないはずなのに、なぜか重なる部分がある。どちらも誰かに好かれたいという承認要求が強いんだろうと思う。
千晃先生の実家に来て、現実世界から離れられて安心する反面、このままでいいのかという不安がよぎる。ここにいてもいいんだと声をかけられるが、何だか複雑な気持ちだ。いい大人がいつまでも叔母を頼るわけにはいかない。
千晃先生はあることをひらめいていた。
愛香は教師を辞めたという先生の決意に圧巻するが、無職の状態はいつまで続くかと心配していた。