ムーンライトベリーの香りが忘れられなくて
第8話 土砂降りの雨の中にぼんやりと光る電灯
千晃先生の家を飛び出して、電灯がぼんやりと光る道路を歩いた。
さっきまで晴れていたはずの空から少しずつ雨粒が頬や鼻にあたる。
今の愛香の心と同じなんだろうか。空の気持ちと連動する。
雨と涙がわからないくらい溢れ出る。徐々に雨脚も強くなる。
傘もささずにあてもなく、歩いた。今いるここもどこかわからない。
自宅の方向への方向もわからない。充電の%も残り10%。
スマホのマップアプリで確認することすらできないくらい。もうどうでもよくなる。天を仰ぎながら静かに泣く。
これがシャワーだと思ってしまえば全然平気だ。今着ている服は、千晃先生から借りたもので、制服は置いてきてしまった。家に戻るのも今は考えたくない。せっかく、千晃先生の近づけたのに、こんなにも辛い想いするくらいなら、片想いのまま遠くから見守っていた方がよかったのかと後悔した。あの場所で転ばなければこんなことにはならなかった。
近づいて彼の見たくないところが見える切なさと寂しさがに満たされる。
立ち止まり、顔を両手でふさいで、泣き続けた。
バシャバシャと水たまりを駆け出す音が後ろから聞こえた。真っ暗な道に誰かと恐怖を覚える。
「白崎!! どこ行くんだよ」
千晃先生が追いかけてきた。知らない人だと思いこんで、そのまま歩き出す。もう、さっきの出来事は忘れたい。
「白崎!!」
愛香の前に千晃先生が立ちはばかる。大雨の中、電灯の光でぼんやりと映し出す愛香の顔をじっと見る。
「風邪、引くだろ。ほら、家帰るぞ」
「……行けません。私、先生の彼女じゃないし、妹でもないので」
「……俺は、お前の保護監督しなきゃいけないんだよ。まぁ、頼まれてないけどさ」
愛香はそういわれても頑固に目的地もわからず、前へと進む。右膝がズキッと痛んで、水たまりに滑って転ぶ。
「おい! まだケガが治ってないんだから、無理すんなよ。まったく……」
千晃先生は、転んだ愛香を見かねて、お姫様抱っこした。
「ひゃッ」
出したこともない高音の声が出た。土砂降りの雨がいまだ降り続ける。千晃先生の眼鏡が濡れている。きっと前は見えてない。愛香は、千晃先生の首を両手でぎゅっと抱きしめた。突然近づく愛香の体に千晃先生がㇵッと驚いた。
「……私、ずっと前から先生が好きなんです。だから妹って言わないで」
さっきよりも雨が激しく降る。千晃先生は黙ったまま何も言わない。聞こえていないのかもしれない。聞こえてないことで恥ずかしくなる。抱っこされたまま千晃先生の家に向かう。お互いにびしょぬれのままで部屋に入ると、床もびしょぬれになる。玄関の床におろされた。
「風呂、沸かしてたからすぐ入れ。風邪ひくって」
「……」
やっぱり聞こえなかったんだとがっかりしながら、愛香は、言われるがまま、お風呂でぬれた体を洗った。スナックあじさいのママにもらった試供品のシャンプーを早速使おうと千晃先生に訴えて、リビングにあった試供品シャンプーパックを持ってきてもらった。しぶしぶ届けてもらい、匂いを嗅ぎながら、頭を洗った。想像以上に好きな香りだった。
「ムーンライトベリーの香りなんだ……」
香りの余韻を味わいながら、洗面所で髪を乾かす。今していることって先生の家に住んでいるみたいだなと思いながら、心が少し軽やかになった。そもそも、お風呂も入ってしまったら、どこで寝ればいいんだと考えたら、緊張のあまり体がカチコチに固まってきた。冷静な判断はできるのだろうかと男性の気持ちになってしまっている自分にツッコミを入れる。
「お、上がったか? んじゃ、俺も入って来るわ。ソファにでもくつろいでな」
ふわっと乾いたばかりの髪の上をぽんぽんとされて胸がきゅっとしめられた。落ち着いて待ってられないと訴えたかったがすでに遅かった。シャワーの音が聞こえてくる。どんな顔をして待てばいいのだろうか。時計の針がカチコチと響いている。
さっきまで晴れていたはずの空から少しずつ雨粒が頬や鼻にあたる。
今の愛香の心と同じなんだろうか。空の気持ちと連動する。
雨と涙がわからないくらい溢れ出る。徐々に雨脚も強くなる。
傘もささずにあてもなく、歩いた。今いるここもどこかわからない。
自宅の方向への方向もわからない。充電の%も残り10%。
スマホのマップアプリで確認することすらできないくらい。もうどうでもよくなる。天を仰ぎながら静かに泣く。
これがシャワーだと思ってしまえば全然平気だ。今着ている服は、千晃先生から借りたもので、制服は置いてきてしまった。家に戻るのも今は考えたくない。せっかく、千晃先生の近づけたのに、こんなにも辛い想いするくらいなら、片想いのまま遠くから見守っていた方がよかったのかと後悔した。あの場所で転ばなければこんなことにはならなかった。
近づいて彼の見たくないところが見える切なさと寂しさがに満たされる。
立ち止まり、顔を両手でふさいで、泣き続けた。
バシャバシャと水たまりを駆け出す音が後ろから聞こえた。真っ暗な道に誰かと恐怖を覚える。
「白崎!! どこ行くんだよ」
千晃先生が追いかけてきた。知らない人だと思いこんで、そのまま歩き出す。もう、さっきの出来事は忘れたい。
「白崎!!」
愛香の前に千晃先生が立ちはばかる。大雨の中、電灯の光でぼんやりと映し出す愛香の顔をじっと見る。
「風邪、引くだろ。ほら、家帰るぞ」
「……行けません。私、先生の彼女じゃないし、妹でもないので」
「……俺は、お前の保護監督しなきゃいけないんだよ。まぁ、頼まれてないけどさ」
愛香はそういわれても頑固に目的地もわからず、前へと進む。右膝がズキッと痛んで、水たまりに滑って転ぶ。
「おい! まだケガが治ってないんだから、無理すんなよ。まったく……」
千晃先生は、転んだ愛香を見かねて、お姫様抱っこした。
「ひゃッ」
出したこともない高音の声が出た。土砂降りの雨がいまだ降り続ける。千晃先生の眼鏡が濡れている。きっと前は見えてない。愛香は、千晃先生の首を両手でぎゅっと抱きしめた。突然近づく愛香の体に千晃先生がㇵッと驚いた。
「……私、ずっと前から先生が好きなんです。だから妹って言わないで」
さっきよりも雨が激しく降る。千晃先生は黙ったまま何も言わない。聞こえていないのかもしれない。聞こえてないことで恥ずかしくなる。抱っこされたまま千晃先生の家に向かう。お互いにびしょぬれのままで部屋に入ると、床もびしょぬれになる。玄関の床におろされた。
「風呂、沸かしてたからすぐ入れ。風邪ひくって」
「……」
やっぱり聞こえなかったんだとがっかりしながら、愛香は、言われるがまま、お風呂でぬれた体を洗った。スナックあじさいのママにもらった試供品のシャンプーを早速使おうと千晃先生に訴えて、リビングにあった試供品シャンプーパックを持ってきてもらった。しぶしぶ届けてもらい、匂いを嗅ぎながら、頭を洗った。想像以上に好きな香りだった。
「ムーンライトベリーの香りなんだ……」
香りの余韻を味わいながら、洗面所で髪を乾かす。今していることって先生の家に住んでいるみたいだなと思いながら、心が少し軽やかになった。そもそも、お風呂も入ってしまったら、どこで寝ればいいんだと考えたら、緊張のあまり体がカチコチに固まってきた。冷静な判断はできるのだろうかと男性の気持ちになってしまっている自分にツッコミを入れる。
「お、上がったか? んじゃ、俺も入って来るわ。ソファにでもくつろいでな」
ふわっと乾いたばかりの髪の上をぽんぽんとされて胸がきゅっとしめられた。落ち着いて待ってられないと訴えたかったがすでに遅かった。シャワーの音が聞こえてくる。どんな顔をして待てばいいのだろうか。時計の針がカチコチと響いている。