きみに恋した数ヶ月。〜君にさようならをする時〜
空翔に来ないでといった数日後のことだった。


暇だった。テレビも見たけれど情報番組もアニメも何もかもがつまらなかった。そんなときのことだった。


コンコン


「はぁい」


扉の向こうにいた人をみて、私は驚いた。


だって、それは別れを告げた"空翔”だったから。



「愛」


「なんで、来ないでって言ったじゃん」


空翔の顔を見ずに話を続けた。見たら、壊れてしまいそうだったから。



「愛。やっぱり俺、愛と一緒にいたい。だからさ、来ないでなんて言うな」


「でも…」


「俺が居たいんだよ!」


空翔の大きな声にビクッとした。


まさか、空翔がそんなことを言うだなんて。


「俺が居たい。愛のそばにいてやりたいんだ」


その熱意に私は折れた。


「分かった。もう、来ないでって言わない。でも、お願い聞いてくれる?」


「なんだ?」


「お菓子パーティーしよう!」


私の言葉にあっけにとられたらしくしばらく開いた口がふさがっていなかった。


「分かった。売店で見繕ってくる」


そう言って、空翔は売店へ行った。
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「カンパーイ!」

そう言って、同時に缶ジュースのプルトップを開けた。


口に運ぶと甘いオレンジジュースの味が口いっぱいに広がった。


「愛、これ美味い」

そう言って差し出してきたのは、ポテトチップスの塩味。


「ポテチは、美味しいよね」


「あぁ」


そうやって、おやつを食べた。ソフトクリームのアイスとかキャラメルラテ味の棒アイスなどたくさん食べた。


今しかない。そう思って口を開いた。


「ねぇ、旅行行かない?」


「いつ?」


「明後日」


「どこ行くんだ?」


「長崎」


「は?」

私の思わぬ返答にあっけにとられて口がふさがっていない空翔。


「いいじゃん」


「最後の思い出だしさ」


しばらく、空翔は黙っていた。


その後、「分かった」と言ってくれた。


やったぁ!最初で最後の旅行だ!


その夜も私は興奮で一睡も出来なかった。
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