きみに恋した数ヶ月。〜君にさようならをする時〜

君がいない

君は、もうこの世にいない。


俺が愛した人ー八木愛。


彼女は、一昨日死んだ。


一昨日は、2人で長崎に行く予定で駅前で待ち合わせだった。



集合時刻の8時。その時間になっても彼女は、来なかった。近くで救急車の音が聞こえ現場に向かった。


現場に着くと、人がごった返していてそれを掻き分けた。



一番先頭に来ると、長袖のパーカーに長いジーンズの女の人が血まみれで倒れていた。



遠くだったけど、俺は“愛”だと分かった。急いで、愛に近づいて抱いた。



すぐに救急隊員が俺に愛の身元を確認してきた。その後は、救急隊員に救急車に乗る許可をもらい一緒に行った。



俺は、聞こえているか分からない愛の耳にそっと言った。「大好き」と。



でも、彼女からの答えは返って来なかった。


翌日、愛の葬儀で両親に会った。


お父さんは、悲しみを隠そうと毅然と振る舞っていた。お母さんの方は、泣き崩れていて立つこともままならないのかもしれない。



「この度は、申し訳ございませんでしたっ!」



俺は、深々と謝った。



気がつくと、泣いていた。いや、泣いていた。とっくに。俺の雫が床にあたった。



「空翔くん、愛といっしょにいてくれてありがとうっ!」


お母さんが涙ぐみながら言った。お父さんも深く頷いた。




じゃあ、準備があるからと言って愛の両親は何かをし始めた。




俺は、愛が入っている棺まで足を運んだ。



棺の中の愛は、優しく幸せそうだった。



「空翔、ありがとうー」


そんな声が聞こえてきた、ような気がした。




愛は、火葬され骨になって帰ってきた。と入っても、魂はない。でも、骨の一つ一つが愛の生きた証のようにも思えた。




葬儀が終わり、帰ろうとしたところを愛の両親に呼び止められた。




「これを」


そう言って、渡されたのは吉村空翔さまと書いてある封筒だった。几帳面さも伺えるその字は紛れもなく愛の字だと分かった。







手紙を、両親からもらい家に帰った。



すぐさま、自分の部屋で愛の手紙を読んだ。
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