恋のコードが解けるまで
 
土曜日の朝。

秘書課の佐伯さんが美容室を予約してくれて縮毛矯正をした。私の天然パーマと格闘し、サラサラのストレートヘアーにしてくれた美容師さんには感謝しかない。
午後から休む暇なく、スーツ2着とパーティー用のワンピース1着。靴、鞄化粧品に至るまで全て佐伯さんが選び、会社のカードで支払ってくれた。
予算の上限はあるからと言いながらも、がんがんカードを切っていく姿はさすが重役ポストの秘書だなと感心した。

土曜深夜。

ロシア担当のインフルエンザ多田さんからロシア関連の資料が送られてきた。

『一通り目を通して下さい。数か月取り組んできた仕事なので、昨日今日で内容を理解してほしいという訳ではありませんが、どういうことをやってきたのかというイメージ湧けばよいかと思います』
『了解しました。確認します』

ありえない午前0時のメール。疲れた躰に鞭打って返信した。
明け方までかかり一通り目を通し、質問や疑問点などをまとめ多田さん宛てにメールを送信した。眠い目をこすりながらやっと布団に入ると、まさかの折り返し多田さんからレスがあった。

何回かラリーし、最終的に杏奈の仕事は『通訳』で、その他の海外事業部の案件は全て鈴木GMがやる。下手に口を挟んで面倒なことになると困るので通訳に徹して、頼まれたことのみをして下さいという事だった。
 
やる気を出すなってことですね。

『了解しました』

最後の多田さんからのメールは『熱が上がってきました。おやすみなさい』というものだった。


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