恋のコードが解けるまで


「藤野さんは北海道初めてですか?」
「はい」

「プログラマーなのにロシア語も話せるってすごいですね。どこで学ばれたんですか?僕なんて英語も怪しいです。ははっ」
気を遣って話しかけてくれる。

「祖母がロシア人なので話せるようになりました」
「それじゃ、クォーターなんだ!どおりで奇麗な人だなぁと思ってたんですよぉ」
適当に笑ってごまかした。
お世辞だろうが、奇麗なんて言われるの子供の時以来だ。容姿をディスられるのは慣れているけど逆は対応に困る。

「時間があったら美味しいお店とか紹介したいんですが今回は忙しいですね」
そりゃ今回は忙しいよ。後ろの席でパソコン打ってるであろう鈴木さんを気にせず会話が進む。

「北海道で美味しいものと言えば、やはり玉ねぎでしょうか」
なんとか会話を続けなければという使命に駆られ、生産量の全国トップの玉ねぎというワードを出してみる。

「……たまねぎ……?あ、確かに玉ねぎ美味しいですよね。でも、ジンギスカンとかカニとかイクラとかも美味いんで今度良かったらご馳走しますよ!何か食べたいものあります?」

カニとか王道過ぎる気がしたので、農作物推ししてみる。
「そうですね、ニラとかピーマンとか」

「農作物系ですね、それならイチゴが最近美味しい品種を開発したとか言ってたのでうまいかも」
後ろの席で鈴木さんが「ぶっ」と噴出した。

やっぱりどうしても初対面の人とのスムーズな会話が難しい。

朝から行動を共にしているが、仕事以外の話題をいっさい出さなかった鈴木GMマジ尊い。
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