恋のコードが解けるまで
最終日、北海道支店へ立ち寄る時間がなかったので支店の皆さんには電話で挨拶をした。
空港で職場へのお土産を買っていると。
「僕からも、藤野さんをお借りして、助けてもらったわけだから、情シスの皆さんに何か渡したいな」
鈴木さんは土産物店で人気があるという、牧場のキャラメルを部署の人数分買ってくれた。
お土産物屋さんの店員さんがうっとりとした目で鈴木さんを見ていた。右の眉を上げて「どうも」といい、商品を受け取る姿に杏奈も見惚れていた。
情シスの部長から連絡があり、明日、明後日は休日出勤の振り替えで杏奈は休んでいいと言われた。鈴木さんが部長と交渉してくれたみたいだった。
飛行機の座席に座ったとたん疲れがどっと出た。
「明日休めると思うとありがたいです」
鈴木さんにお礼を言った。
「いえどういたしまして」
笑顔で返してくれた。
もしかして彼は明日仕事なのかもしれない。申し訳ないと感じながらも、彼の仕事に対する姿勢がかっこいいと思った。
杏奈は明日から4連休だ。
部長は了承してくれたかもしれないが、今頃有田さんがブチギレしてると思う。
「仕事の話でなんだけど、今回の北海道案件の報告書を藤野さん視点でまとめて欲しい。何だったら一緒に作ってもいいし。是非、また一緒に仕事ができたら嬉しいなと思ってる」
帰りの飛行機でうつらうつらしていると、鈴木さんが今後の話しだした。
「もちろん情シスでの仕事は大事だし、藤野さんは無くてはならない存在かも知れないけれど、今後新しいジャンルに挑戦することも考えてみてはどうかと思う……その多言語を操れる才能を…………」
杏奈は鈴木さんの横でいつの間にか眠っていた。
鈴木はぐらつく杏奈の小さな頭をそっと自分の肩に置いた。そしてブランケットを広げて杏奈の体にかけてくれた。