恋のコードが解けるまで

机に職務内容と日程表のような資料が置かれていて、目を通すように言われた。

その仕事内容とは、北海道で行われる大手商社主催のレセプションパーティーに同行するという物だった。
招待客は多国籍。海外事業部としては、人脈を広げることができるビジネスチャンスだという。

その翌日は、業務提携しているロシアの企業カラグラコフとのミーティングがあり、そこにロシア語通訳が必要だという。
そのロシア企業は、前日のパーティーにも参加しているが、重要なのはこのミーティングだという事らしい。

「海外事業部のロシア担当の者がインフルエンザにかかってしまって、急遽代役が必要になってしまった」

との説明が口頭で付け加えられた。

それで杏奈に声がかかったのかと納得しかけたが、他にも2名、女性がここに呼ばれているという事は、同行者が杏奈に決まったわけではないようだ。

今回この場で、海外事業部の部長と鈴木GMが3人を面接して、使えそうなら誰か1人を同行させるつもりなのだろう。

そんな話は聞いていないし、急に他部署から呼び出されて面接をされるとか意味が解らない。


「秘書課の堂本さんは、こういうパーティーに参加したりしたことはあるのかな?」

簡単なあいさつの後、杏奈の隣に座っている女性に、部長が英語で質問してきた。
堂本さんは奇麗な英語で、パーティーに参加したことがあると答えた。


2人の女性は秘書課の人らしく、今までに多くのレセプションパーティーに同行した経験があり、どんな集まりにも臨機応変に対応できるという事だった。
彼女たちはロシア語は話せないが、英語力は問題なく、接待や接客対応などもプロ。

『コミュニケーション能力も高いでしょうし、どうぞ秘書課の方、北海道へ行ってきて下さい』杏奈は心の中で呟いた。
< 4 / 74 >

この作品をシェア

pagetop