恋のコードが解けるまで

 
月曜の朝、出社するとみんなから「北海道で大活躍したらしいじゃないかと」褒められた。

このまま引き続きロシアの件での協力を求められたが、杏奈は情シスでプログラマーとして働いているわけで専門分野の仕事をおろそかにはできない。ロシア担当者も病気から復活したらしいので今後はそちらで対処してくれと、部長が断ってくれたようだ。

やっと自分の居場所に帰ってこれてほっとした気分だった。
 
「キャラメルごときで俺は懐柔されない」
いつも通りの有田さんのちょっかいに適当にツッコミながら溜まった仕事を確認していた。

「本当にもう、どこにも行かないでくださいね。杏奈さんいない間、有田さんの相手するの大変だったんですよ」
うちのチームの一番下っ端、クリリン(栗山)が杏奈に言ってくる。

「ごめんクリリン」

「有田さん部長に凸ってましたから。海外事業部って名前付いてんだからロシア語できるやつくらいいるだろ!いなきゃ雇え!とか言ってました。こっちの仕事舐めてんのかって」
想像できるから怖い。

「でも、みんなで高級焼肉店のの焼肉弁当食べたって聞きましたよ」
二人ともまずいバレた、というような顔をした。
部長に焼肉弁当で懐柔されたらしい。

「クリリンは先ず英語を学べ、そもそも俺らの仕事は英語できるヤツのがどうしても有利だからな。多少アホでも英語さえ身についてたら転職の履歴書パリッとさせられるしな」

「なに僕を転職させようとしてるんですか!」

有田さん急に話をすり替えてるし。

溜まった仕事を渡されて杏奈は「今日中に帰れると思うな」といわれる。

よく見てみると、ほとんどは有田さんが片付けてくれていたようで、杏奈が覚悟していたほどの仕事の量は残っていなかった。さすが優秀なエンジニア。有田さんに感謝。

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