恋のコードが解けるまで

紺色のフレアーパンツ。ストレッチ素材、ウエストはゴム。何の変哲もない白いシャツ。せっかくストレートヘアにしたのに後ろで一まとめに束ねているため、変化がない。
杏奈は安定のダサさに戻った。

「髪の毛まっすぐになってんぞ、ちりちりじゃなきゃ面白くない」というのが有田さんの感想だった。

元の部署に戻って一週間が過ぎた。 

ロシア案件でのメールのやり取りは落ち着いた。海外事業部から杏奈に直接電話がかかってくることはなかったが、後から聞くと『そちらで何とかしてください』と内線は全て有田さんがシャットアウトしていたらしい。
 
仕事の面では、皆が「もうダメかも」と思っている時でも、強靭な精神力で決して諦めず、最悪の事態を回避したりする。有田さんは、頼りがいがあり、できる上司なのだが時折やけに子供じみた行動を起こす。
 
「少しぐらいなら海外事業部の手伝いできますけど」
そこまで忙しい時期でもないので杏奈は言ってみた。

「あいつら調子に乗るから駄目」
有田さんはニヤリと笑った。
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