恋のコードが解けるまで
昼休みに鈴木さんから個人のスマホにメッセージがきた。
久々のイケメン鈴木さんだ。
『金曜日に北海道の件でお礼がしたいので、打ち上げも兼ねて食事でもどうですか?』というお誘いだった。当日はインフルエンザから復活した多田さんと法務部の林さんも出席するらしい。
隣からスマホを覗き見たクリリン。
「打ち上げという名の、それは合コンの誘いです。リア充のためのもので、陰キャには地獄の集まりです」
「いやいや、人のスマホ覗かないでよ。女性が1名だけの参加でも合コンっていうのですか伍長?」
「そんな怪しい合コンなんですね……女性一人なんて危険です少佐」
後ろから有田さん。
「今週の金曜だろ?駄目よ。うちで三十路会やるから、焼き肉な」
「まだ三十路じゃないですしおすし」
「お前、焼き肉食いたがってたろ、肉の恨みは怖いからな、おごりですしおすし」
「のった!」
「便乗!」
クリリン伍長も参加らしい。
焼肉弁当を餌に、部長が有田さんたちメンバーに、杏奈を海外事業部に行かせることを納得させたので『カルビで売られた女』と冗談交じりに呼ばれていた杏奈。
有田さんはその事を気にしていてくれたのだろう。
「海外事業部のヤツらはみんな40オーバーだ!鈴木も40歳のおっさんだしな。三十路会には参加できない」
有田さんはそう言うと席に戻り椅子をくるっと回転させて仕事を始めた。
――鈴木さん40歳なんだ、若く見える。ここぞという時に、重みのある発言をするし、落ち着きがあり、男の余裕を感じるのはやはり年齢からくるものなのだろう。
『お疲れ様です。残念ながら今週の金曜は予定があり、都合がつきません。誘って下さって有り難うございました』
杏奈はアラフォーイケメンに返信した。