恋のコードが解けるまで

暑い日のビールと焼き肉は最高である。
 
「三十過ぎると赤身の美味しさを知るんだよ。もうな、あれよ、胃にくるから、脂っこいのは若いうち食える時に食っとけ」
 
有田さんは私とクリリンに、リブロース、サーロイン、ミスジ、イチボ、カイノミという牛を一頭まるごと味わい尽くす贅沢なセットをごちそうしてくれた。どの部位も絶品。

「どうしたんすか、有田さん馬券でも当たったんですか?」
 
クリリンは肉から目を離さず炭火の調節をしている。100キロの大台に乗ったにもかかわらず、クリリンの食欲は旺盛だった。
 
「まぁ、たまにはな」

有田さんは太っ腹だった。

「でもクリリン、また巨大化してないか?ダイエットも少しは考えろ」

「アメリカに行ったらこんなのデブの内に入りません」
 
「お前、いつからアメリカ人になったんだよ。金髪美女紹介してくれ」

「2次元でよければ」

いつもの軽口を聞きながら、杏奈は慣れ親しんだ心地良い居場所を堪能していた。

 

 
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