恋のコードが解けるまで
クリリンが先に帰った後、有田さんは杏奈をアパートの近くまで送ってくれた。
「今までは、お前、人同士の関係性やつながりを持つの、好きじゃなかっただろう。特に自分の考えとか気持ちを相手に伝える事が下手くそだった」
頭一つ分背の高い有田さんは杏奈の半歩前を歩きながらそう話した。
「……苦手です」
「まぁ、でも仕事では必要なわけよ。私生活では、お好きにどうぞなんだけど。んでさ、もうプログラマーとして4年やった訳でそろそろ、次のステップ踏め。最近は人との関係性「交流」や「対話」も自分から持とうとしているし、相手からも好印象な感じだから何とかやっていけると思う」
SEをやってみろという話だった。上司らしく「応援する」とい言ってくれた。
苦手を克服することは自分の成長につながる。面倒だから、嫌だからと避けているばかりではいけない。それも好きになれるよう頑張ろう。
仕事では有田さんが杏奈の事をよく見ていてくれるから、甘えていた部分も大きかったのかもしれない。そろそろ独り立ちなのかなと、少し寂しくなった。
杏奈のアパートの近くまで来ると、毎日のうだるような暑さでお疲れ気味だった有田さんは、生ぬるい夜風にあたりながら、俺、肉でスタミナついたから、夜のあっちの方もガンガンいける気しかしない。三十路の星だわ。と言いながら繁華街へ消えていった。