恋のコードが解けるまで

リリカさんが自分の部屋からワインを持ってきた。
田舎から送ってきたらしいそのワインは、地元のブドウ園で作っているみたいでなんだか暖かい味がした。
 
「同期なんですよね有田。職場で何回電話しても絶対に藤野さんに取り次がないし、子供かよって感じでまったく」
 
不機嫌そうにぼやく。
 
それは関係のない部署の仕事にいつまでもうちの部下使うなっていう、有田さんなりの『チームを守る』的な何かがあるうのでしょう。深くかかわって初めて知るわかり辛い優しさがあるんです。心の中で有田さんを擁護する。

「すまない。愚痴っぽくなったね」
 
苦笑いする。

リリカさんにカレーをよそって、福神漬けを添えて渡した。
カレーを作った日は、匂いを嗅ぎつけてリリカさんがドアを叩く。二人しか住人のいないアパートなので、週に一、二日だけの話だが、一緒に晩御飯を食べるのが当たり前になっていた。
 
食費代わりにと田舎から送られてきたお米や野菜なんかを、全て杏奈の家に持ってきてくれる。リリカさんは自炊を全くしないからだが、食費の面を考えると杏奈は助かっている。持ちつ持たれつの関係はなかなか合理的で気に入っていた。

「杏奈ちゃん。職場でうまくやってるのか心配していたの。すごくいい子なのに、友達作るの下手くそだし。なんていうか、女を捨ててるから」
それとなく職場の様子に探りを入れてくる。

「部署が違うので、普段の様子はあまり知らないのですが、秘書課の人達とは買い物に行ったりしたのかな?北海道の時は、洗礼されたキャリアウーマンっぽくなってましたね」
いやいや決して仲良く買い物に行ったわけではない。半ば脅して無理やり仕事させたようなものだった。
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