恋のコードが解けるまで
面接は続く。部長の質問に対して、少し食い気味に答えるところを見ると、彼女たちは北海道出張にとても行きたいようだ。
美味しいものも食べられるし、現地ではリゾートホテルに宿泊できるらしい。この出張は彼女たちにとっては、旅行みたいなものなのかもしれない。
それから鈴木GMの同行というのがポイントなのだろう。彼女たちは先ほどから、キラキラした目で鈴木さんとやらを見つめている。
鈴木GM、海外事業部での役職がゼネラルマネージャー、という事は出世コース昇り詰める系の、仕事ができる男なのだろう。
杏奈の仕事とは直接かかわりがない部署の人なので、鈴木GMと会ったのは初めてだった。
一見すると、相当モテそうなパーフェクトガイだなと思った。
特筆すべき点としては彼はとても整った眉毛をしていた。バランスのいい素晴らしい眉毛だと思った。
杏奈はレセプションパーティーに出席したことはない。
そもそもプログラマーなのでほとんど自分のオフィスから出ない。
取引先の人と会うこともあまりないので、接客スキルやコミュニケーション能力は皆無。
自分は力不足で役に立てないだろうと部長に率直に伝えた。
秘書課の女の人がクスっと笑ったような気がした。
というわけで『私帰っていいですか?』と心の中で呟いた。