恋のコードが解けるまで

「えっと、友達になったという感じではないです。鈴木さんの出張に同行するには……なんていうか、TPOがどうのこうので。とにかく相応しくないらしかったので、北海道出張を断るよう言われました」
 
「え、そうなの?」
驚いたような表情を見せる鈴木さんに。
「なにそれ酷くない?」
リリカさんも何言われたのと身を乗り出して杏奈にきいてきた。

トイレで言われたことを掻い摘んで話した。

「あの、結果的に私が録音して脅した感じなので……言われたことは正論でしたし、問題なく北海道の仕事も終えることができたので終わりよければなんとかです」
 
「いや正論って、あんた……よほど彼女たちが出張に同行したかったのね。女怖いわ」
 
負けられないわとかなんとか。リリカさんは全く関係ないのに戦闘態勢に入っている。

「そこまで気が回らなかった。申し訳なかった。あの時は仕事のことで頭がいっぱいだったし、言い訳になるけど、僕が君にしたいと部長にいったんだ。秘書課の人達よりも君の方が同行者には適していると感じた。十分すぎる結果も出ているし、間違いなかったと思ってるよ」
 
鈴木さんは杏奈が彼女たちに責められた事に対して、責任を感じているようだった。

いうんじゃなかったと少し後悔した。でももう会うこともないでしょうから気にしないで欲しいと伝え、再度、私がコンプライアンス違反だって彼女たちを脅しましたし。と付け足した。

 

鈴木さんはリリカさんと気が合ったみたいで、楽しく飲んで終電前には帰って行った。
 
友達と集まってお酒を飲んだり、鍋をしたり、リア充のイベントをすること、に興味がなかったが杏奈だが、今日は意外と楽しめた。

 
リリカさんが『外で友達を作りなさい。若い時間はそれほど長くないのよ』と酔っぱらったのかおじさん臭い説教をしていた。
 
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