恋のコードが解けるまで

恋愛マスター


翌日、昨日のカレーをうどんにしてリリカさんと食べた。
昨夜、職場のイケメンを部屋に連れてきたので、その話がしたいんだろう。

「鈴木さんはカレーを食べに来ただけなので、なんら深い意味はありません」
 
「なるほど、カレー好きなのね。確かに杏奈ちゃんのカレーは美味しけど……」
 
納得がいかなかったのか、女性の家に”誘った訳でもない男性”が、わざわざ来るという事に、何らかの意味があると言いたいらしい。

期待を裏切って申し訳ないけれど恋愛的な要素はない。
 
「よっぽどお腹がすいてたんじゃないですかね」
 
 
俗世間と関わりを断った、仙人のような生き方をしている杏奈の人生。リリカさんは、どこかの物好きな男性が杏奈の孤独に、彩を添えてくれることを願っている。
自分の目的にあった人間関係だけを選択すると、世間が狭くなり小さく纏まってしまうのは分かっている。
 
世界は広いんだからもっといろんな出会いや経験を積んでいかなくちゃ。とリリカさんは言った。
最近同じようなことを有田さんからも言われたわけで、これは自分が変わるターニングポイントなのだろうか?
 
話の流れでリリカさんの恋愛講義が始まった。これが世間でいう女子トークらしい。
 
私には恋愛感情というものが欠落している。恋愛マスターリリカはそう診断した。
男性に抱きしめられたいとか、守ってもらいたいとか、可愛く思われたい。普通にある女子の感情を目覚めさせ、キュンキュン、ドキドキを経験しなければならないみたいだ。
 
何事も経験してないのに無理だとか、自分に合わないと決めつけてしまってはダメだ、とリリカさんは言った。

それは杏奈にとって、新しいチャレンジなのかもしれない。
陽キャと関わったこの機会に、恋とかしてみたい。ロシア対策メンバーや鈴木さんとの出会い。パーティーやリゾートホテル。新しい楽しい発見は杏奈にとってとても刺激的な事だった。

この先の自分の人生に何か変化があるかもしれない。杏奈に自己開発意欲が芽生えたのだった。
 
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