恋のコードが解けるまで

そうこうしているうちに数日が経った。

今朝出勤する時、鈴木さんから『渡したいものがあるので』とSNSメッセージがあり、社の入り口で落ち合った。

「カレーのお礼。それとリリカさんに」
金平糖と豆菓子とか手作りのドライフルーツなんかがたくさん入ったお土産を頂いた。出張で金沢へ行っていたようだ。
さり気ない気遣いができるのも、さすがイケメン。杏奈は遠慮なく頂いた。
 
「今日の……その服……日焼けしないの」
鈴木さんは、少し考えるように杏奈に尋ねた。

今日は暑かったのでノースリーブのサマーニットにレギパンストレッチスリムのコーデだった。冷房対策に勿論カーデガンは持参している。
 
「肩を出して、男どもの視線釘釘付け作戦です」
 リリカさんは確かそう言っていた。

「なに、それ……」
 
心当たりのないところに矢が飛んできたように鈴木さんは目を見開いた。
 
「リリカさんの今日のテーマです。日焼けの事は考えてなかったです。気を付けます」

「というか、男どもの視線を釘付けにしたいの。藤野さんが?」

「釘付けにできればいいなと思いますが、ここに来るまで誰にも見られてなかったです。視線を感じるって事では残念な結果ですね」
 
そもそも釘付けにするとはどういう事なのか、経験がないので解らない。
 
「……いや、ま、それはどうかな。魅力的だけど。部内とかで……ジロジロ見られるん、じゃ……ないかな」
 
「ああ、その辺はあれですね、うちの部、好みの対象はみんな2次元ですし、現実の人間、女性への興味は持ってません。ほとんどロリコンですから……萌ポイントが違いますね」

「なるほど、なかなか想定外の答えだ。とにかく藤野さんは、なんだろ、なんていうか……危うい」

「誰がロリコンだよ」
 
後ろから有田さんの声がした。
よ、と軽く鈴木さんに挨拶し、エレベータの方へ杏奈たちを促した。
 
「何を朝からいちゃついてんの。ここは入口、目立つぞ」

「出張の土産を渡しただけだから。いろいろお世話になったからね」
 
ふうん、と頷きながら御土産の紙袋を一瞥し、杏奈と鈴木さんの間に割り込んだ。

「お前カーデガン着ろ、エロいぞ」
 
有田さんはそういうと、エレベーターのボタンを押した。
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