恋のコードが解けるまで

会議室から出ると、秘書課の佐伯さんと堂本さんに無理やり女子トイレへ連れていかれた。

「だから、あなたが同行しても何の役にも立たない足手まといなだけ」

「鈴木さんが恥をかくし、迷惑極まりない。それに、なにその恰好?どこに売ってるのよそんな洋服?」

白いペイズリー柄のシャツと紺のパンツだ。どこにでも売っている。
ウエストゴムだけど。

「普通はコミュ力必須の出張なんて断りますよね、あつかましい」

「鈴木さんは海外事業部の中でも一番人気がある貴重な独身。優良物件なの。あなたみたいな新参者が声をかけていい人じゃないわけ、あなた身の程知らずだわ」

いや、鈴木さんが優良物件であろうがなかろうが、私は声をかけていませんし、かけるつもりもございません。

「パーティーの招待客なんだから、そこそこ見栄えの良い人じゃないとダメなんですよ。そんな生まれたてみたいな顔して、ダサい服着て、そこんとこ自分で解ってるの?」

仕事の事ならまだしも容姿の事で先程からひたすらディスられている。

「なにその髪型?爆発したの?カリフラワーなの?」

いやいや天然パーマです。『ブロッコリー』と言われたことはあっても『カリフラワー』は今までなかった。新鮮だわ。なんかフラワー付いてるだけ可愛く感じる。
30分ほど続いただろうか、彼女たちの嫌味はまだ続きそうだ。

そもそも私は北海道なんて行きたくないし、断るつもりだったけど、あからさまにディスられると、逆に彼女たちを北海道へ行かせてなるものか!と闘争心が湧いてくる。

「一日中パソコンと睨めっこしてしてる穴倉部署なんだから表に出てこなくてもいいのに。何様のつもりなの?なんとかいいなさいよ」
 
来たくて出てきたわけではありません。

「ほんと、ウザッ」

は?


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