僕は彼女に絆されている
僕の愛しい彼女
旅行を来週に控えた、平日の夕方。
仕事終わりの華乃子は、ショッピングモールにいた。

琉夏が見ていた腕時計を、プレゼントしようと思ったからだ。

「………」
(うぅ…値段、エグい…)

ブランド物の腕時計。
値段も、素敵な金額だ。

しかし、普段の琉夏への感謝や喜んでほしいという想い、そして何より琉夏への深い愛情を何か形にして贈りたい。

華乃子は、おもいきって購入したのだった。

旅行までは、バレないようにバッグに大切にしまった。


そして、旅行当日。
駅に向かう、琉夏と華乃子。

2人分の荷物が入った、大きめのキャリーケースを引く琉夏。
反対の手で、しっかり華乃子の手を握っている。

しかし琉夏は、少し機嫌が悪い。

その理由は、今朝にある―――――――


今朝早く、荷物のチェックを一緒にしていた二人。
『――………あれ?ノコ。
今日のバッグ、大きいね!なんで?』

『へ?
あ…色々入れてたら、大きくなっちゃって…(笑)』

『色々?
珍しいね(笑)
ノコは、あんまり荷物を持ち歩かないでしょ?
いつもはポシェットなのに、今日は大きめのショルダーじゃん!』

『えーと…お化粧道具とかを…』

『…………ん?なんかノコ、怪しいよ?
お化粧道具、僕のショルダーに入れてあげるから、いつものポシェットにしな?
他にもあるなら、僕が持っててあげるから。
あんまり重くなると、肩とか首が痛くなるよ?』

『大丈夫ですよ?』
琉夏にプレゼントする腕時計。
箱に入って、ラッピングされている。
それを崩さないように入れているので、大きめのショルダーにしたのだ。

今日渡す予定だが、まだバレたくない。

それを必死に隠しているのが逆に怪しまれ、琉夏の機嫌を損なわせてしまったのだ。


「る、琉夏くん…!」

「ん?何?」
前を向いたまま返事をする、琉夏。

「………あ、あの…」
(怖い…
いつもは、私の顔を見て話してくれるのに……)

「うん」

「お、怒ってますか?」

「怒ってはないよ」

「………」

「でも、傷ついてる」

「え……」

「ノコ、隠し事してるよね?
何でも知りたいとは言うつもりないけど、あからさまに隠されると傷つく」

琉夏の握っている手に、グッと力が入った。
< 18 / 43 >

この作品をシェア

pagetop