僕は彼女に絆されている
そして、後日。

仕事が終わり、帰ろうとする華乃子にカハラが声をかけてきた。

「新川さん!」

「え?あ、カハラさん。
お疲れ様です!」 

「お疲れ!
ねぇ、この前の弁当のお礼したいんだけど!」

「え?」

「給料出たし、飯奢るから行かない?」

「あ、大丈夫ですよ!」

「やっぱダメ?
彼氏、嫌がるかな?」

「すみません!」 

「やっぱそうだよな…(笑)
うーん…じゃあ……」
カハラが少し考えて、パッと顔を上げた。

「弁当は?」 

「え?お弁当?」 

「ここから少し行ったとこにある、ステーキ弁当めっちゃ旨いの知らない?」

「あ、聞いたことはあります!
食べたことはないですが…」

「めっちゃ旨いよ?
それを奢るから、持って帰って彼氏と食べなよ?
もちろん、彼氏の分も奢るから!
それなら良くない?」

「でも…そんなの、悪いです…
あんな手抜きみたいな弁当で……」

琉夏への弁当は手が込んでいるのだが、華乃子の弁当の中身は残り物を詰め込んでいる。

華乃子は逆に“失礼なことしたかも?”と思っていたくらいなのだ。


“俺の気が収まらないから”

そう言われ、結局2つのステーキ弁当を持たされた華乃子。

返すわけにもいかず、持って帰ったのだった。

マンションに帰り着くと、既に琉夏は帰って来ていた。

「おかえり、ノコ!」
微笑み、出迎えてくれた琉夏。

華乃子も自然と微笑んだ。
「ただいま帰りました!」

「ん?それ何?」
華乃子の手にぶら下がっている袋を指差す、琉夏。

「あ…これは……その…」

華乃子が事の説明をする。
すると、琉夏の表情が少しずつ切なく歪んでいった。


そして華乃子は、ベッドに縫いつけられることになったのだ。

「――――――
ほんっと、腹が立つ。
ノコは僕だけのモノなのに……!」

「ご、ごめんなさ……」

「ん?
“何が”ごめんなさい?」

「え?」

「ノコの気持ち、わからなくもないよ?
カハラくんの行動も、わからなくもない」

「………」

「僕は、怒ってるんじゃないんだよ?」

「え?」

「“嫉妬して、傷ついてるだけ”」

「琉夏くん…」

「きっとノコのことだから、同僚が困ってて弁当を食べさせたに過ぎない。
カハラくんも、お礼がしたくて今回のような行動をとったんだと思う。
ノコには僕がいるから、二人で食事をするのを避けてくれたんでしょ?
…………でもね。
何度も言うように、僕は独占欲が強いし、嫉妬しちゃうんだよ?」


“だから、また満足するまで抱かせてね?”

そう言って、夜更けまで抱かれたのだった。
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