僕は彼女に絆されている
海辺で行われた、BBQ。

先輩達が琉夏の周りを陣取っているので、華乃子は近づけない。

琉夏に近づける最後のチャンスを思っていたが……
やっぱり、無理だと諦めかけていた時。

先輩同士で琉夏を巡って喧嘩になり、一人の先輩が怪我をした。

『先輩!大丈夫ですか!?』

『えぇ…』

『でも、頭…血が…!!?』

『大…丈夫よ…』

『病院行きましょ?
私が支えるので!』

華乃子が付き添い、病院から出ると琉夏がいた。
その時、華乃子は琉夏に対して怒りが湧いていた。

『大丈夫!?』

『頭を打ってるみたいですが、脳には異常ないそうです』

『良かった…』

『良くないです!!』

『え……』

『こんなの、おかしい!!』

『君…』

華乃子は涙で瞳を濡らし、琉夏を睨みつけていた。
『板鳥先輩がしっかりしなきゃ、今度はもっと酷い怪我人が出ますよ!?
板鳥先輩のクラブなんだから、先輩がしっかりみんなに目を配ってかないと!!
何かあってからじゃ遅いです!』

『………』
華乃子の真っ直ぐな視線と言葉が、琉夏の心を刺した。

これが………琉夏の中に、華乃子の存在が入り込んだ出来事だった。


華乃子はファンクラブを抜けたが、これをきっかけに琉夏が華乃子に声をかけるようになる。

そして、華乃子のふわりとした雰囲気や、穏やかで癒やされる空気、照れるとはにかむ可愛さに心が奪われていく。

至って普通の女性。
特に目立つこともなく、ある意味空気のような人。
なのに華乃子を知っていくと、一緒にいることが心地よく、癒やされる。

琉夏は日に日に惚れていき、華乃子に告白をした。

そして二人は付き合うようになり、今に至るのだ。


会社に着いた琉夏。
「おはようございます!」

「おはよう〜」
「おはようございまーす!」
社員達が挨拶してくる。

琉夏の勤める会社は、決まったデスクがない。
あいている席に座り、ノートパソコンを出して仕事を開始する。

「おはよう、琉夏」
そこに、女性社員が来て向かいの席に座った。
同期の女性・ヒガだ。

「おはよう」
大学の同期でもあり、在学中から何かとくっついてきて、就職もどこかから情報を得てこの会社に就職した。
さらに、琉夏のファンクラブの幹部でもあった。

琉夏は、ヒガが苦手だ。

華乃子と交際していることも知っているはずなのに、ここまでしてくるなんて正直ひくし、彼女面してくることも癇に障る。
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