僕は彼女に絆されている
そして今日は、向井 町のサイン会。

華乃子は、琉夏とデパートにいた。
長蛇の列の最後尾に並び、順番を待つ。


「ノコ。
ここ!ちゃんと見せててね!」

爽やかな笑顔で、華乃子の首にあるキスマークを指差す琉夏。

昨晩も、狂おしい程に抱かれた華乃子。
案の定琉夏は、華乃子の首にキスマークをつけたのだ。

超絶イケメンで爽やかな笑顔をして、発言は結構重い琉夏。

華乃子は、苦笑いをして頷いた。

「………幻滅してる?ノコ」

「へ?」

「ごめんね、束縛して」

「いえ!
びっくりはしてますが、幻滅はしないです!
なんだかんだで、私も琉夏くんが大好きですし!」

「うん、ありがとう!」


少しずつ進んで………

華乃子の番になる。

「こんにちは!」
そう言って、座っている向井が華乃子に微笑んだ。

「……/////」
華乃子は緊張で、固まってしまう。

「ノコ?」 

「え?あ…え、えーと…」
声をかける言葉は、沢山考えてきた。
なのに本人を前にすると、一瞬で頭が真っ白になってしまう。

「今日は、サイン会に来てくれてありがとうございます!」
そんな華乃子に、向井が微笑み声をかけた。

「あの…ずっと向井 町さんの小説が好きで、毎日読んでます!
これからも、応援してます!」

そう言って、小説を渡す。
その裏表紙に、サラサラとサインを書いた向井。
「あ、お名前聞いてもいいですか?
サインと一緒に書きたくて」

「あ、華乃…」

「新川です!」

華乃子は“華乃子さんへ”と書いてほしくて、名前を言おうとする。
それを遮るように琉夏が言った。

「えーと…しんかわさんは、新しい川?」
「はい」

「はい、じゃあ…」
サインの上に“新川さんへ”と書いた。

「応援、ありがとうございます!
これからも頑張りますので、是非また小説に目を通してくださいね!」

そう言いながら、小説を渡してきた。
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