僕は彼女に絆されている
サイン入りの小説を抱き締めている、華乃子。

「ノコ、それ貸して?
僕のバッグに入れててあげるから」

「あ、はい」

華乃子から渡された小説を、自身のボディバッグに入れた琉夏。
華乃子の手をしっかり繋ぎ「何処行こうか?」と聞く。

「琉夏くん、ありがとうございます!」
そんな琉夏に、華乃子は見上げて微笑んだ。

「え?」

「サイン会です!
本当は、嫌だったんですよね?」

「え……!?」

「向井 町さんが男性ってわかっても、さすがに行くなとは言わないだろうけど、一緒には来てくれないかなって思ってて。
だから私、一人で来なきゃかな?って思ってたので」

「それは……
ノコが好きだからだよ!」

「え?」

「うーん…嫉妬はするし、束縛もしちゃうけど…
ノコのこと大好きだから、受け入れたい。
好きな人の、好きなモノは全部理解したい」

「はい!」


それから二人は、あてもなく街をブラブラ歩いていた。

旅行代理店の前を通り「旅行、楽しかったね!」と話ながら、ふと新婚旅行特集というパンフレットに華乃子の目が止まった。


「……/////」
(結婚かぁ、良いなぁ〜)

琉夏と付き合って二年。

(………って、ないか…(笑)
まだ、一緒に住んで一年も経ってないし…)

隣の琉夏を見上げた。

綺麗な横顔だ。
未だに不思議だ。

こんな素敵な人が、私なんかを恋人にしてくれたこと。

「ん?」

「あ…//////」
この優しく微笑む笑顔。
一番好きな顔だ。

「どうしたの?」

「あ、あの…/////」

「うん」

「………きです…」

「ん?
ごめん、聞こえない」

琉夏が華乃子の口元に、耳を持っていく。


「琉夏くん」

「うん」

「琉夏くん、好き…」

「え…//////」
バッと顔を赤くし、向き直る。

そんな琉夏の服をキュッと握り、はっきりとした口調でもう一度言った。


「琉夏くん、大好きです!
ずっと、傍にいてください……!」
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