恋愛対象外に絆される日
焼酎お湯割りで小さく乾杯した。
あー、あったかい。

「長峰は、よかったの?」

「何がです?」

「クリスマスなのに」

「仕事でしたけど?」

「いや、彼女とか……さ」

「いたら来ないわ」

「いないのかよ」

「いないっすねー」

「陽茉莉ちゃん?」

「あれはファンに近い。芸能人みたいな。今日は彼氏が迎えに来てた」

「ふーん」

長峰は陽茉莉ちゃんに憧れ抱いてて、でも陽茉莉ちゃんには彼氏がいる。私は彼氏がいたけど今日別れた。ふふん、同士よ。

「畑中さんこそ、よかったんです?」

「何が?」

「クリスマスなのに俺と過ごしちゃって」

「あー……」

本当だ。よく考えたらそうじゃん。恋人ともクリスマス過ごしたことなかったのに、初めて一緒にクリスマスを過ごす相手がまさかの後輩、長峰とは。いやはや、人生とは摩訶不思議。

……なんか年寄りくさいな、私。

「ねえ、せっかくだからクリスマスデートっぽくしてよ」

「え、これ、そういうシチュエーション?」

「クリスマスデートしたことないからさぁ」

「何だそれ、無茶振りすぎる。先輩えぐい」

「ふふん、先輩だからね」

何だそれって、自分でも思う。でも何だか長峰と話をしていると気が紛れるというか、貴文と別れたことがどうでもよくなってきたというか……。

美味しいお酒に美味しい料理。ディナー行かなかったからお腹すいてたし、余計に美味しいのかも。

冷えて寒かった体もすっかりぽかぽかになって、もうマフラーもいらない。おかわりは焼酎お湯割りじゃなく、ビールに変更だ。

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