恋愛対象外に絆される日
とても暖かくて心地良い日。
今日はレトワールの後輩で仲良しの陽茉莉ちゃんの結婚式だ。式や披露宴は親族のみで行うらしく、その日の夜に私たちレトワールの面々と、陽茉莉ちゃんの旦那様である水瀬さんの会社の方々で小さなパーティーが催された。

私と遥人はもちろん参加。陽茉莉ちゃんはとっても可愛くて明るくてレトワールの太陽みたいな存在。レトワールって日本語で星って意味だけど、いい意味で星を掠めさせるほど明るい。陽茉莉ちゃんが水瀬さんを好きになって、私が後押ししたくらいだし、私ってば恋のキューピットかしら、なーんて――。

「結子さん、ずっとニコニコしてますね」

「だって嬉しいじゃない。遥人だって嬉しいくせに」

「嬉しいし、ほんと感慨深い」

「だよね」

私たちがそう思うのは、陽茉莉ちゃんが大きな事故に遭ったから。意識不明だと聞いたときは毎日のように泣いて祈っていた。回復してからも記憶喪失になっていたりだとか、そのことで遥人と一緒に店長に掛け合ったりしたことも今ではいい思い出。衝撃的なことが続いたけど、こうしてまた友達になれて一緒にレトワールで働けていることがとても嬉しい。

陽茉莉ちゃんは記憶喪失になる前に水瀬さんとお付き合いをしていて、記憶喪失になってもまた水瀬さんに恋をした。だから陽茉莉ちゃんの結婚がなおさら嬉しい。よかったねって何回言っても足りないくらい。

「それはそうと、結子さんいつも以上に綺麗で心配」

「心配?」

「水瀬さんの会社の人に狙われないか」

「ないわよ」

「さっき結子さんのこと、『あの人めっちゃ綺麗』って言ってた人がいた」

「うそ、嬉しい~」

喜んだら遥人が不満顔になった。
なによ、綺麗って言われたら嬉しいじゃないの。

「まったくもう、遥人ってほんと私のこと好きね」

「そうだよ。好きすぎて困るくらいにね」

怒った口調なのに言ってることは甘い。可愛いやつめ。
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