恋愛対象外に絆される日
比較的のほほんとしている我が家。母から「お兄ちゃん、彼女を連れてくるんですって」と聞いたときには腰を抜かしそうになった。
確かにお正月に会ったときは携帯電話を眺めながらニヨニヨしていたから、彼女いるんでしょってからかったけど、冗談だったのよ。まさか本当だったなんて――。

お兄ちゃんは優しいけど、無愛想で冷たい印象がある。妹の私は慣れてるからどうってことないけれど、きっと他所の人にはそんな印象与えちゃうんじゃないかって心配までしてるくらい。

そんなお兄ちゃんに彼女?
しかも紹介してくれるの?
天地がひっくり返るんじゃ……!

母はウキウキしているし、父は黙ってソファに座っている。……あ、お兄ちゃんの無愛想さってお父さん似なのかも。

てことはお兄ちゃんってばまさかお母さんみたいな人を連れて来る? パートナーは自分の親に似てる人を選ぶなんて言うものね。あ、いやいやそうすると私の彼氏はお父さん似ってことになるし、そんな無愛想じゃないし、わっかんないなぁ。

「舞花、いつまでパジャマ着てるの? 早く準備しなさい」

「はいはい」

ダラダラしてたら叱られた。お兄ちゃんが来る時間までまだ余裕あるのにさ。

お兄ちゃんとは五歳離れてる。就職してすぐに家を出たお兄ちゃんに、大人ってすごいなぁなんて憧れを抱いていたけれど、いざ自分が就職したら家から通えるしその方が楽だしって私はまだ実家で甘えてる。

私よりもずっと先にいるお兄ちゃん。家族に紹介してくれるくらい、いい人ができたんだなぁって思うと何だか感慨深くなった。
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