恋愛対象外に絆される日
とにかく家の中がソワソワしている。なんだかんだ皆お兄ちゃんのこと好きだもんね。お母さんなんてお兄ちゃんのことイケメンとか言うし。絶対親バカフィルターかかってると思うけど。
でも確かにお兄ちゃんは背も高いし優しいし真面目で努力家。昔は家でいっぱいお菓子作ってたなぁ。練習だからっていつも食べさせてくれた。私はそれを綺麗にラッピングして『友チョコ』と称してさも自分が作ったかのように友達に配ったっけ。
懐かしい思い出に浸っていたらピンポーンとインターホンが鳴った。ざわめき立つ我が家。
まさかの全員での出迎えにもかかわらず、お兄ちゃんの彼女さんはとても綺麗な笑みを浮かべた。
「こんにちは。はじめまして。畑中結子と申します」
うわー!
世の中にはこんな美人さんがいるんだって思うくらいその人は凛として綺麗で、しばらく見入ってしまった。何これ、少し遺伝子分けてほしい。不公平だよ。お父さんお母さんごめん。
「あっ」
結子さんは私を見て小さく声を上げたので、お兄ちゃんが「どうした?」と優しく聞いている。てか、お兄ちゃんの声音優しっ。どうしたどうした、マジで天地ひっくり返るんじゃない?
「あの、前にレトワールでケーキを購入されましたよね?」
「えっ、私ですか?」
「あー、違ってたかな? すっごく可愛いかったから良く覚えてて。クリスマスの後くらい」
「あっ!」
今度は私が声を上げた。そうそう、そうじゃん、なんか既視感あると思ったの。
「レトワールの美人な店員さん! うわー、そうだったんですか。めちゃくちゃ美人さんがいるって思ってたんです。まさかお兄ちゃんの彼女だなんて」
「私もあのときのお客さんが遥人くんの妹さんだったなんて思いもよらなかった」
「え……知り合いだったの?」
お兄ちゃんが困惑した声を出した。
困惑してるのはこっちだよ。レトワールで見た美人な店員さんがまさかお兄ちゃんの彼女だとは思わないじゃないの。
「お母さんもその話混ざりたい」
「いや、とりあえず上がってもらってだな……」
何だかもうフリーダムな我が家。お兄ちゃんがめっちゃ不機嫌な顔をしている。だけど結子さんが「楽しいね」ってお兄ちゃんに笑いかけたら、私が今まで見てきたお兄ちゃんは何だったんだろうってくらい、とんでもなく甘い笑顔で微笑んだ。
「ね、お兄ちゃんってイケメンでしょ」
母が得意げに言う。
そうかもしれない……なんて思ってしまった日曜日の午後。我が家は今日も平和だ。
【END】
でも確かにお兄ちゃんは背も高いし優しいし真面目で努力家。昔は家でいっぱいお菓子作ってたなぁ。練習だからっていつも食べさせてくれた。私はそれを綺麗にラッピングして『友チョコ』と称してさも自分が作ったかのように友達に配ったっけ。
懐かしい思い出に浸っていたらピンポーンとインターホンが鳴った。ざわめき立つ我が家。
まさかの全員での出迎えにもかかわらず、お兄ちゃんの彼女さんはとても綺麗な笑みを浮かべた。
「こんにちは。はじめまして。畑中結子と申します」
うわー!
世の中にはこんな美人さんがいるんだって思うくらいその人は凛として綺麗で、しばらく見入ってしまった。何これ、少し遺伝子分けてほしい。不公平だよ。お父さんお母さんごめん。
「あっ」
結子さんは私を見て小さく声を上げたので、お兄ちゃんが「どうした?」と優しく聞いている。てか、お兄ちゃんの声音優しっ。どうしたどうした、マジで天地ひっくり返るんじゃない?
「あの、前にレトワールでケーキを購入されましたよね?」
「えっ、私ですか?」
「あー、違ってたかな? すっごく可愛いかったから良く覚えてて。クリスマスの後くらい」
「あっ!」
今度は私が声を上げた。そうそう、そうじゃん、なんか既視感あると思ったの。
「レトワールの美人な店員さん! うわー、そうだったんですか。めちゃくちゃ美人さんがいるって思ってたんです。まさかお兄ちゃんの彼女だなんて」
「私もあのときのお客さんが遥人くんの妹さんだったなんて思いもよらなかった」
「え……知り合いだったの?」
お兄ちゃんが困惑した声を出した。
困惑してるのはこっちだよ。レトワールで見た美人な店員さんがまさかお兄ちゃんの彼女だとは思わないじゃないの。
「お母さんもその話混ざりたい」
「いや、とりあえず上がってもらってだな……」
何だかもうフリーダムな我が家。お兄ちゃんがめっちゃ不機嫌な顔をしている。だけど結子さんが「楽しいね」ってお兄ちゃんに笑いかけたら、私が今まで見てきたお兄ちゃんは何だったんだろうってくらい、とんでもなく甘い笑顔で微笑んだ。
「ね、お兄ちゃんってイケメンでしょ」
母が得意げに言う。
そうかもしれない……なんて思ってしまった日曜日の午後。我が家は今日も平和だ。
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