恋愛対象外に絆される日
「型崩れを直すのは難しいと思うわ」

「新しいの買って返したほうがよくない?」

「そうかなぁ?」

「ていうか、マフラー借りるって、どういう状況よ?」

「いや、それがね――」

結局、クリスマスに貴文にフラレた話と、その後長峰にやけ酒付き合ってもらった話を二人にしゃべった。
私の中でその出来事は思い出深いけれど、だからといって何かあるわけでもなく、ただ事実として淡々と述べただけだったのだが……。

「待て待て、その後輩くんめっちゃいい奴じゃん」

「そうかな?」

「貴文さんより優しくない?」

「いやー、どうかな?」

長峰を貴文と比べてみたことはない。そもそも長峰《ヤツ》は恋愛対象じゃないからだ。考えたこともなかった。

「てか、浮気されてたの?」

「わかんないけど、電話越しに女の気配がしてさー、何か違和感っていうの? そういうのあるじゃない?」

「そういえば私、だいぶ前に貴文さんとバッタリ会ったことがあってさ、挨拶したんだけどその時に隣に若い女がいたわ。別に疑いもしなかったけど、よく考えたら聞いてもないのに同僚だって紹介してくれたっけ」

「うそー。それじゃないの?」

「くそう、結局若いのがいいのかよ」

「男ってやつは」

「そういうやつは結局どんどん目移りするって。忘れて次行こ、次」

私たちの中で、貴文が会社の若い子に目移りしたの決定。間違ってたとしてもいい、それでいい。理由がつけられたことでなおさら別れたことに対する踏ん切りができたというか、バッサリ切れるというか。

うん、人に話すって大事だな。特に気心知れた女子だけで話すのって楽。何言っても自由だもん。




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