恋愛対象外に絆される日
03
年末年始はレトワールも定休日だ。といってもちゃんとした休みは三日ほどで、あとは短時間営業をしている。今年はありがたいことに私は連休となっている。

クリスマスから怒涛のように日々が過ぎ、長峰にマフラーを返さぬまま年末を迎えてしまった。結局マフラーの型崩れは直らず、購入して返そうということになったのだけど。

マフラーのメーカーがわからず、似たようなものを探しにフラフラとショップを巡った。

「……わからん」

あれやこれや手に取ってみるも、どれがいいのかさっぱりわからない。しかも長峰のマフラーは藍色とグレーがグラデーションのようになっていて、単色じゃないのだ。

「そんなもの売ってないんですけどぉ」

もういっそのこと現金渡して好きなものを買い直してもらおうか。それかブランドの良いもの買って渡そうか。ていうか、その前に型崩れさせちゃったこと謝らないとなぁ。

ため息ひとつ、ひとまずレトワールへ赴いた。休日なのに職場へ行くってどれだけレトワールが好きなのよって思わなくもないけど、年始に実家へ帰省するからその手土産を買うのと、もし長峰が出勤していたら直接謝ろうかと思ったのだ。

「いらっしゃいませー」

朗らかな声が店内に響く。陽茉莉ちゃんだ。陽茉莉ちゃんの声ひとつで店内が明るくなるよう。やっぱりいいな、レトワール。  

「あっ、結子さん」

陽茉莉ちゃんが私に気づいて声をかけてくれたので、手を振ってこたえた。
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