恋愛対象外に絆される日
「ねえ、何食べに行く?」

「鍋焼きうどんとかで温まりたいっすね。駅前の店なんてどうです?」

「いいねぇ。そこにしよ」

年末だからか、行きすがらあまり人の通りは多くない。長峰とくだらない話をしながら歩く。北風は冷たいけど、貸してもらった手袋はとても温かい。のんびりとした雰囲気に、久しぶりに休日だなぁと実感した。

それでも駅前まで行けば、それなりに人は多く賑わっていた。お目当てのうどん屋は満員で、「どうする?」とお互い顔を見合わせる。

「そっか、年越し蕎麦食べる人で賑わってるんだ」

「なるほどね。そう言われると蕎麦も食べたくなってきた」

「私は時間あるから待ってもいいけど?」

だって家に帰ったって一人だし。今日はどうせ紅白見ながらダラダラするだけの予定だもの。毎年貴文と年越ししてたけど、それももうないしね。

「俺も暇なんで待ちます。蕎麦食べたい」

「鍋焼きうどんじゃないの?」

「大晦日っぽく?」

そう笑いながら、長峰は受付表に名前を書いた。
回転は早そうだけど、待ってる人も多い。少ししかない待合いのベンチもいっぱいだ。しかたなしにベンチが空くまで店先で待つことにした。

食べ終わったお客さんがぞろぞろと出てくる。しばらくすると店内のベンチも少し空いたようなので中に入ろうとしたのだけど――。

「長峰、ストップ」

「はい?」

思わず長峰の後ろに隠れた。
なんで隠れなきゃいけないのと思いつつも、勝手に体は動くわけで……。長峰、背高いなー。便利。
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