恋愛対象外に絆される日
「食べないんです?」

「食べるわよ」

熱々の鶏肉と椎茸。じゅわっと出汁が広がって美味しい。私が頼んだ天ぷらうどんとは少し味が違う。

「椎茸はこういうとき、凶器よね」

「何で?」

「熱すぎて舌やけどしたわ。でも美味しいから許す」

椎茸に謎の上から目線。それくらい、私は今動揺してるってことで……。いやほんと、うどん食べることに集中して落ち着くことにする。

「長峰はもう大掃除した?」

「日頃から綺麗にしてるのであえて年末に掃除はしないですね」

「うそ、意外と綺麗好きなの?」

「綺麗好きというよりは、きちんとしたいタイプ」

そう言う長峰はうどんも綺麗にすする。確かに仕事中の長峰もきびきび動いている気がするし、長峰が担当した日のケーキはとても繊細で綺麗だと思っていた。クリームの先端が全部揃っていたときはロボットかとツッコんだこともある。(例のごとく長峰はドヤ顔していた)

「手伝いましょうか?」

「何を?」

「大掃除。毎年彼氏に手伝ってもらってたんでしょう?」

「そうだけど、それはさすがに悪いわよ」

長峰は背が高いから便利だなーとは思うけれど。だからってそんな理由で働かせるほど鬼じゃない。しかもさっきまで仕事してたわけだし。

「俺、高いところに手届きますよ」

「うん、そこは魅力的。掃除するうえで」

「役に立つ男」

「なぜそこでドヤるの」

可笑しくて二人で笑った。
クリスマスの日も、なんでもないことでこうやって二人で笑ったことを思い出した。

知らなかったな。長峰と一緒にいると楽しいってこと。ただ一緒にうどんを食べて他愛のない話をしてるだけなのに。
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