恋愛対象外に絆される日
休憩中、話題はやはりクリスマスのこと。
私たち洋菓子店の店員は毎年クリスマスは仕事と決まっている。早番遅番のシフト制だから、早番に当たれば夕方に勤務終了。遅番はラストまで。

今年、私は早番に当たっている。夕方に終われるから、今回みたいに恋人とクリスマスディナーができるわけで。

「クリスマスデートって憧れる」

陽茉莉ちゃんが目をキラキラさせる。そんな彼女は来年の春、結婚が決まっている。私より二歳年下の二十八歳。クリスマスデートしなくたって、ちゃんと恋人と上手くいく証明。

「別にクリスマスじゃなくてもクリスマスっぽくすりゃクリスマスデートになるでしょ」

ちょっと冷め気味なのは長峰。私より四歳年下。二十六歳。彼女はいるのか知らん。とりあえず陽茉莉ちゃんに憧れを抱いていることだけは知っている。まあ、すでに玉砕しているけど。

「去年ここで食べた仕事終わりのケーキが一番美味しかったわ」

「あっ、わかります。すっごく美味しかったですよね」

「俺が作りましたからね」

ドヤるな、長峰。
でも仕事終わりのケーキ、本当に美味しかった。

「今年は早番だから、食べられないなぁ」

「結子さんは彼氏さんとディナーでしょ」

「ん、まあ、そうね」

「テンション低いっすね」

うっ。まあ、ね。
だってさ、全然楽しくないんだもの。絶対別れ話されるから。わかってて行く私も私だけどね。

「楽しみじゃないんですか?」

「……あんまり」

「どうして?」

あー、本当に。陽茉莉ちゃんってどうしてこう無垢な瞳で見てくるかな。この悪意のない純粋な疑問。そんな風にまっすぐ聞かれると、正直に言ってしまいそうになる。

「……たぶん、別れ話されるから」

「「えっ!?」」

陽茉莉ちゃんと長峰が目をまん丸くした。零れ落ちそうなくらい、これでもかって。

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