恋愛対象外に絆される日
ドッキンドッキン――。

跳ねた。
え、まさか。まさかだよ。でも跳ねた。私の心臓。びっくりするくらいに大きく跳ねた。

だって、この瞬間、長峰がものすごくかっこよく見えてしまったんだもの。

握りしめている胸のあたりを更にぎゅうっと握る。
ドキドキと鼓動が速い。
落ち着いて、私。
相手は長峰なのよ。
弟みたいで生意気な後輩、長峰なんだから。

失礼極まりないことを脳内で会話していると長峰に不思議そうな顔をされる。

「どうしました? シュークリーム食べたい禁断症状ですか?」

「……そうみたい。早く買って食べよ」

コンビニのスイーツコーナーにはお目当てのシュークリームが数個並んでいた。それを二つ手に取る。

「食べるよね?」

「もちろん」

ニッと笑う。
ただ同意をしてくれただけなのに、胸がきゅんって……。

うおおおいっ!
きゅんって何だ、きゅんって!
違う違う違う、違うんだって。

めちゃくちゃ動揺している自分に動揺。
動揺しすぎて気づいたらコンビニの外に出ていた。
手にはシュークリーム二つ、レシートも持っているからちゃんとお会計はしたらしい。無意識、怖い。

「どこで食べます? コンビニにもイートンコーナーありますけど」

「え? ああ、じゃあそこにする?」

わざわざ家に戻ることもない。外に出たのに再びコンビニへ入店。コンビニのレジ横に設置されているイートンコーナーは誰もいなくてゆったりと使えるのに、二人で隅っこに陣取った。

テーブルの上にシュークリームを置くと、長峰もコートのポケットから缶コーヒーを取り出してコトリと置く。

「コーヒー買ったの?」

「シュークリームにはブラックコーヒーでしょ。はい、これは結子さんの分」

「わ、ありがとう」

私の買ったシュークリームと長峰の買った缶コーヒーを交換した。なんか……嬉しい。

「大掃除お疲れ様でした、乾杯」

「お疲れ様〜」

缶コーヒーをコツンとぶつける。あたたかいコーヒーは疲れた体に染み渡る。シュークリームにかぶりつけば苦いコーヒーとよく合う甘さがしゅわっと口いっぱいに広がった。

「どうですか、念願のシュークリームは」

「美味しすぎる。ずっと求めてた味」

「ふっ、幸せそうな顔」

「甘いもの食べると幸せでしょ」

「間違いない」

長峰も幸せそうに笑った。
ああ、この時間が永遠のものになればいいのに。

そう思ってしまったから、もう潔く認めた。
私は長峰のことが好きなんだ、と。
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