恋愛対象外に絆される日
「ごめんごめん、クリスマスなのに」

「クリスマスディナーに行くのに? 別れ話?」

「ちょっと意味不明なんですけど」

まあ、確かにね。
なんで別れ話するのにわざわざクリスマスディナーするのよって、話よね。

「たぶん、フラレるんじゃないかなーって話。何が起こるかは明日になってみないとわかりませーん」

ちょっとおちゃらけて言ったのに、陽茉莉ちゃんは泣きそうな顔をするし、長峰は呆れた顔。
うーん、私、余計なこと言ったかも。

「何でそう思うんです?」

長峰がドキリとすることを口にする。

「え、何が?」

「畑中さん、その彼氏と付き合って長いって言ってませんでした?」

「ああ、うん、五年くらい?」

「だったら別れ話じゃなくてプロポーズとか」

「あっ! そうですよ、そういうサプライズとか!」

「ないわー」

即座に否定した。
ない。うん、ないわ。そういう彼氏じゃないんだ、あの人は。さっぱりしててお互いに遠慮ない。そういうところが好きだったんだけどな。

あ。
なんかこれ、私の方が彼をフルみたいな考え方だな。だって私の中で貴文は過去の人になりかけてる。

「まあいいのよ。私も別に彼に縋りたいわけじゃないし。もしほんとにフラレたら、やけ酒付き合ってよ」

「それくらいならいつでも」

長峰はすんなり頷き、陽茉莉ちゃんは「うーん、そうならないことを祈りますぅ」と渋々頷いた。

いいのいいの。それくらい軽いほうがいい。
未練がましく別れたくないなんて意地になる私は想像できないし、したくもない。

それに――。

もし、万が一、プロポーズだったとしても、素直に「うん」って言える気がしなかった。今のこの関係が、好きで付き合ってるのか情で付き合ってるのか、はたまた惰性なのか、よくわからなくなっていたからだ。
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